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知財実務Q&A:当社が販売している製品に対して、「自社の特許出願に抵触する」「補償金」などと記載されている「警告書」を受け取ったのですがどうすればよいでしょうか?
~中小企業の社長の為の知財実務Q&A~
Q. 当社が販売している製品に対して、「自社の特許出願に抵触する」「補償金」などと記載されている「警告書」を受け取ったのですがどうすればよいでしょうか?
A 以下の対応を検討しましょう。
・補償金請求権の基本ルールを知る
・特許出願の特許成立の可能性を予測する
・特許出願の特許成立を阻止する
・特許出願の現状の権利範囲(特許請求の範囲)を確認する
・専門家(弁理士)に相談する
<補償金請求権の基本ルールを知る>
補償金請求権の警告書とは、特許出願公開が行われた後であって「特許成立前」に、特許出願公開公報に掲載されている発明を実施している第三者に対して特許出願人が送付する警告書です。
補償金とは、「第三者が警告を受けた日(または特許出願の存在を知ってしまった日)」から「特許成立前」までの審査中期間について、第三者が製造・販売した行為に対する実施料(ライセンス料)相当額を意味します。
上記補償金の定義からわかるように、補償金請求権は、「特許が成立した後」に、特許権者が、過去の審査中期間に遡って第三者に金銭的補償を求める権利です。「特許が成立しなかった」場合は、当然、補償金請求権は発生しません。
<特許出願の特許成立の可能性を予測する>
特許出願の審査経過情報を確認したり、自ら先行技術文献等を調べることで、特許出願の「特許が成立する可能性」を予測することが大切です。
一般的に、審査請求した特許出願の中で特許成立するのは60~70%程度です。しかも、審査の過程(拒絶理由土)で先行技術文献を指摘され、進歩性の存在を主張するために、権利範囲(特許請求の範囲)を狭くする手続補正を行うことも多々あります。
このため、特許出願公開公報の特許請求の範囲の記載では特許権侵害になる可能性があったが、審査の結果、特許成立しなかった、あるいは、特許成立したが特許権の効力が及ぶ範囲が狭くなったので特許権侵害にはならず、補償金請求権が発生しないことがよくあります。
<特許出願の特許成立を阻止する>
警告書を送ってきた特許出願の特許成立を阻止するため、自ら調べて先行技術文献等を特許庁に提出して、審査に利用してもらうことが大切です(情報提供)。これにより、特許を成立させない、あるいは、特許成立したとしても権利範囲(特許請求の範囲)を狭させることができます。
<特許出願の現状の権利範囲(特許請求の範囲)を確認する>
警告を受けた自社製品が、特許出願の現状の権利範囲(特許請求の範囲)に抵触するか否かを判断しましょう。また、今後の手続補正書によって、権利範囲(特許請求の範囲)が変更される可能性もありますので、将来、権利侵害となる可能性を予測しましょう。
<専門家(弁理士)に相談する>
補償金請求権の警告書への対応は、様々な検討が必要となりますので、専門家に相談することをおすすめします。
※余談『特許権取得の効果は特許権成立後』が原則
特許出願を行って特許庁の審査を受け特許権が成立した後は、特許権者のみが特許発明を独占できます。つまり、特許権成立後は、特許権者以外の者が、事業として特許発明を実施すると特許権侵害になり、特許権者から差止請求(特許法第100条)や、損害賠償請求(民法第709条)を受けることになります。※余談『なぜ、補償金請求権』が存在する?
例えば、第三者が、出願公開された発明を参考にして自社製品を開発し、特許権成立前の期間中に(将来、明らかに特許権侵害となる)自社製品を大量に製造販売して利益を上げ、特許権成立直後に販売終了するような抜け駆け行為が考えられます。これでは、優れた発明をだれよりも先に特許出願して出願公開した者(出願人)の保護に欠けてしまいます。この特許権成立前の期間についても、特許権成立を条件として保護するのが「補償金請求権」制度です。
※余談『補償金請求権を発生させるための警告書』とは
特許出願公開公報発行後、その発明を実施している第三者を知った時には、次のような内容の「警告書」を送付することが特許出願人に認められています。これを補償金請求権といいます(特許法第65条)。
(参考警告書)
「御社が製造・販売されている○○は当社が特許出願し、その内容が別途の書留便でお届けする特許出願公開公報(特開20○○-○○○号)の特許請求の範囲で特許請求している発明の実施品に該当します。そこで、当社の特許出願について特許庁での審査によって特許権が成立し、御社が製造・販売されている○○が特許権侵害品に該当することになった時には、この警告書をお届けした時点から特許権成立までの御社による○○の製造・販売行為に対する実施料相当額を『補償金』として当社に支払うよう請求させていただくことになります。」
※余談『補償金請求権の警告書を送付した者が負う責任は?』
発明を実施している者に対して補償金請求権の警告書を送付したところ、相手方が実施行為を中止し、例えば、購入していた原材料を費用発生させて廃棄処分した、等の対応を行ったとします。しかし、その後の特許庁の審査で特許権は成立しなかった、ということが起こり得ます。しかし、このような場合でも、補償金請求権の警告書を送付した特許出願人が損害賠償請求(民法第709条)などの責任追及を受けることはありません。
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