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2025年5月総合コラム:「コンセント制度」を適用した初の商標登録(特許庁)
特許庁は、2024年4月に施行された「コンセント制度」を適用した初の商標登録を行ったと発表しました。
https://www.meti.go.jp/press/2025/04/20250407001/20250407001.html
「コンセント制度」とは、先行登録商標と同一又は類似する商標であっても、先行登録商標の権利者の承諾(コンセント)があり、混同のおそれがなければ、類似する後願商標の併存登録を認める制度です。2024年4月1日施行の改正商標法で導入され、施行日以後にした出願について適用されます。
今回、コンセント制度を適用し、初登録されたのは、酒造メーカーの株式会社車多酒造による「玻璃」。ギフト販売のシャディ株式会社が先行登録商標を持っていましたが、両社間の併存登録の同意をもとに、承諾を得た出願に対し、特許庁が混同のおそれがないと判断したことで、登録が認められました。
◇「コンセント制度」の要件と手続上の留意点◇
日本ではこれまでコンセント制度が導入されていなかったので、代わりとして「アサインバック」という手続が行われていました。「アサインバック」とは、出願人の名義を一時的に引用商標(類似する先行商標)の権利者の名義に変更することで、引用商標権者と出願人の名義を一致させて拒絶理由を解消し、登録査定を得た上で、引用商標権者から元の出願人に再度名義変更を行う手続です。アサインバックは、名義変更を繰り返す必要があるため、手続が煩雑化してしまう課題がありました。
特許庁では、コンセント制度の導入により、新規事業でのブランド選択の幅が広がることを通じて、中小・スタートアップ企業の新たなチャレンジを後押しするとしています。
現在も従来のアサインバックによって商標登録を受けることが可能ですが、ここでは、コンセント制度の要件と手続上の留意点を紹介します。
<手続の留意事項>
コンセント制度で注意しなければならない点は、先行する登録商標の権利者の同意があったとしても、商標自体の類似性等により、需要者(消費者)に混同を生じるおそれがあると判断された場合には、登録は認められないことです。
<コンセント制度の登録要件>
①先行商標権者の承諾を得ていること
②先行商標権者との間で「出所混同のおそれがない」こと
※「混同を生ずるおそれがない」に該当するか否かについては、下記の①から⑧のような、両商標に関する具体的な事情を総合的に考慮して判断するとされています。例えば、引用商標と同一の商標であって、同一の指定商品又は指定役務について使用するものは、原則として混同を生ずるおそれが高いものと判断されることになっています。
①両商標の類似性の程度
②商標の周知度
③商標が造語よりなるものであるか、又は構成上顕著な特徴を有するものであるか
④商標がハウスマークであるか
⑤企業における多角経営の可能性
⑥商品間、役務間又は商品と役務間の関連性
⑦商品等の需要者の共通性
⑧商標の使用態様その他取引の実情
コンセント制度による商標登録を受けるためには、単に引用商標権者の承諾を得るだけではなく、混同のおそれが生じないように、あらかじめ、両社間で商標の使用態様などについて、詳細に規定するなどの留意が必要であるとされています。
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