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2024年12月総合コラム:映画「シン・ゴジラ」の立体商標の登録を認定(知財高裁)
特許庁が「商標登録を認めることができない」とした映画「シン・ゴジラ」の立体的形状からなる商標(立体商標)について、知財高裁は「登録は認められるべきだ」とする判決を下しました(令和6年10月30日)。
知財高裁 令和6年(行ケ)第10047号 拒絶審決取消請求事件
https://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/479/093479_point.pdf
商標登録が認められるべきとされた立体商標は以下です。
商願2020‐120003号の商標出願公報
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/TR/JP-2020-120003/40/ja
本願(商願2020‐120003号)は、商品区分の第28類「縫いぐるみ、アクションフィギュア、その他のおもちゃ、人形」を指定商品とする、シン・ゴジラの立体的形状についての商標登録出願です。
<特許庁の審決の概要>
特許庁では、本願商標は(「その商品の品質、形状などを普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標は商標登録を受けることができない」という)商標法3条1項3号に該当するものであって、同法第3条2項の規定(商標法3条1項3号に該当する商標であっても、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものについては、商標法3条1項の規定にかかわらず、商標登録を受けることができる)の適用を受け得るものではない、として商標登録を認めることができないという拒絶審決が下されていました。
<商標法3条1項3号についての知財高裁の判断>
知財高裁は、「本願商標は、『縫いぐるみ、アクションフィギュア、その他おもちゃ、人形』という本願の指定商品の機能や、美観の発揮の範囲において選択されるものにすぎないというべきであり、商標法3条1項3号に該当する」として、本願商標が商標法3条1項3号に該当するとした特許庁の判断に誤りはない、としました。
一方、本願商標について、商標法第3条2項の規定は適用されないとした特許庁判断は、概略、以下の理由により誤りであるとして特許庁の拒絶審決を取消ました。
<商標法3条2項についての知財高裁の判断>
本願商標は、映画「シン・ゴジラ」(平成28年)に登場する怪獣「ゴジラ」の第4形態に対応するものである。
商標法3条2項の「使用」の直接の対象はシン・ゴジラの立体的形状に限られるとしても、その結果「需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができる」に至ったかどうかの判断に際して、「シン・ゴジラ」に連なる映画「ゴジラ」シリーズ全体が需要者の認識に及ぼす影響を考慮することは、何ら妨げられるものではなく、むしろ必要なことというべきである。
映画「シン・ゴジラ」は、平成28年7月に公開されると、記録的な大ヒットとなり、本願商標に係る使用商品だけでも、売上数量102万個、売上額約26億5000万円を記録するなど、本件審決時までの約8年間に、本願の指定商品に集中的に使用された。
シン・ゴジラの立体的形状は、映画「シン・ゴジラ」の公開以前から、本願の指定商品の需要者である一般消費者において、原告の提供するキャラクターとして広く認識されていたことが優に認められる。
令和3年9月実施の全国の15歳~69歳の男女を対象とするアンケート調査において、本願商標の立体的形状の写真を示して「何をモデルにしたフィギュアだと思うか」との質問に対する自由回答で、「ゴジラ」又は「シン・ゴジラ」と回答した者が64.4%とされ、極めて高い認知度が示され、その回答結果は、本願指定商品の需要者(一般消費者)の間でのシン・ゴジラの立体的形状の著名性を示すものといえる。
以上を総合すれば、本願商標については、その指定商品に使用された結果、需要者である一般消費者が原告の業務に係る商品であることを認識できるに至ったものと認めることができる。
<今後の見通し>
本願に関しては、これから特許庁へ戻って拒絶査定不服審判(不服2021-11555号)が再開され、今回の知財高裁判決に沿って商標登録が認められるものと思われます。
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